「笑顔になる、食に夢を見る」

  益子陽介(Pizza 4P's)、坂本健 (cenci)

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写真:Pizza 4P's

今回のゲストは、ベトナムを拠点に、Pizza 4P’sを経営されている益子陽介さん。

聞き手は、設立メンバーの坂本健さん。  

 

 

坂本健(S): まずシンプルに、益子さんが何故ピザ屋を構えたのか、それを軸に生きようと決めはった話が素敵やなと思うんで、その話をしていただけますか?  

 

 

益子陽介(M): わかりました。 当時付き合っていた彼女に、「ピザ窯を作ってほしい」と突然言われて、「どうしてピザ窯なの?」って言ったら、「ピザを焼くのが楽しそうだから」って言われたのが、一番最初です。12年前なんで、日本でピザ窯を作っている人ってすごい珍しくて、一冊しか本が出ていなくて、スドウさんっていうんですけど、その人に問い合わせてみたら、 「来月、山梨で作るから参加しに来るか?作り方教えてあげるから」みたいなことになって、ピザ窯を作るイベントに参加したんですよ。ピザ窯をどうやって作るかっていうのを学んで、友人を呼んで、集めて、結局半年ぐらいかかって作りました。  

 

その時は、毎週のように、自腹で、休みを使って、人を呼んで、すごくワクワクして。何でワクワクしたかって、当時、忙しい人がストレスの中で、金曜とか土曜の夜、日曜日に来たりして、独自のピザを作って、みんなで、「俺のが美味しい!」とか言い合っているうちに、すごいみんな仲良くなって。あっという間に、みんなが仲良くなって帰っていくみたいな経験があって、「すごく楽しかったよ!次いつやるの?」って次の日聞いたりして、それが原体験として、人を幸せにするってこういう事じゃん!と思ったのを、今でもすごい覚えています。  

 

人をマインドシフトする。と言ったらおかしいんですけど、ある瞬間にすべてに感謝する、全部の過去も含めて、今に感謝できるっていうことが、起こり得るんだな。ということがあって、その時に、こういう瞬間を作っていくということをしたいなと初めて思ったのが、ピザの最初のキッカケでした。  

 

その時に、一緒に作った仲間とああいう瞬間を作っていきたいよね。みたいな話をしたんですけど、なかなか出来なくて。僕がサイバーエージェントで勤めているときに、ベトナムに駐在になって、2011年に、彼と一緒にベトナムでピザレストランを作ったというのが始まりでした。 

  

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1枚1枚手作りでピザを作っている

ピザのレストランをやる目的として、一番最初に作ったビジョンが、「Think Universal Act Personal」っていう、世の中をきちんと考えつつも、でも、大事なことは、一番前にいる人たちだから、目の前の人たちから大切にしていこう。幸せというものを考えて、幸せになってもらえるようにしていこう。みたいなものが、コンセプトだったんですけど、ある時から、「Make the World Smile for Peace」っていう風に、ビジョンを変えました。  

 

極論、僕らのビジョンは、世の中の人がどんなことが起きていようが、自分が自分のことをちゃんと受け入れて、本当の意味で幸せだと思って、ポジティブに考えられていく。という心の状態を、世界中の人たちが持てば、あらゆる問題が解決するのではないか?ということを目的として、事業をやっているっていう今があります。 

 

  

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「Make the World Smile for Peace」をコンセプトに、コロナ禍の病院に食事を提供している

事務局(O): 10年前に、Pizza 4P’sを起ち上げられて、有機栽培を始められたり、チーズから自社で作られていますが、10年前と今で、変わった環境や、周りの人たちの変化を、どんな風に感じられていますか?  

 

 

M: そもそも、「無いものが有るようになった」というのが大きいんです。僕がベトナムに行ったころは、フレッシュチーズを作っている会社も、個人も、何もなかったので、自分で始めたんですね。チーズを使おうと思ったとき、ニュージーランドかオーストラリアのプロセスチーズか、イタリアのモッツァレラチーズが、製造日から2週間後ぐらいに届く。みたいな状況だったんで、美味しいチーズをフレッシュで届けたいんだったら、作るしかないな、ということで作り始めたんですね。そういうものが今はあったりとか、もちろん、有機栽培の野菜を作りたくても、その時にはなかったんですけど、今では日本に比べたら全然無いですけど、ありますという状況なんですよ。  

 

ちなみに、当時チーズを作るときに、チーズを作る経験がなかったから、とりあえず農業大学出身の子を採用したんですけど、採用してから、チーズを作れない!というのがわかって(笑)。それから、どうしよう?と考えて、まずは、チーズ作りに詳しい方に夢物語を書いて送ったんですけど、「そんな夢物語、信じられるわけないだろ!」って一蹴されて。結局、YouTubeを見て、作りました。 外食に関しても、すごく変化があって、本当に、あらゆるものがなかったんで、それが今、ものにあふれるまではいかないけど、あるようになっています。

  

 

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チーズ作りの様子

S: おそらく、この10年の変化って、すごい劇的ですよね、ベトナム自体が。  

 

 

M: そうですね。とにかく、経済成長ってこういうことなんだなと思って、景色が毎年変わる感じです。こんなところにビルが建ってなかったのに、ビルだらけになっちゃったりとか、やっぱりすごく寂しいところがあるんですよね。何でベトナムを好きになったかというと、人と人との距離がすごい近かったからという経緯があって。  

妻がひとりで、6ヶ月の娘を連れてスーパーに行ったら、あるおばちゃんが、ちょっと預かっててくれると言って、娘を預かっててくれて、妻が15分くらい買い物して帰ったら、そのおばちゃんが、母乳を飲ましてたんですよ! そもそも、母乳が出ること自体、ビックリしたんですけど、母乳を、知らない初対面の人の子供にあげちゃうっていうことがあって。妻は、人の母乳を飲んで安全かどうかもわからないし、すごい泣いていたんですけど、ただ、僕が感じたのは、子供は地域で育てていくもんだ!みたいな、たぶん、昔あったような光景なんだろうな。と、そういうところが、すごい好きでですね。それが今は、すごく希薄になりつつありますね。  

 

 

O: どのように変わっているんですか?  

 

 

M: ホーチミンに住んでいると、自然との触れ合いがない、というのが一番寂しい。このままだと、典型的な人しか出て来ないんじゃないかな?画一的な子供が出てくるんだろうなっていう気がしています。  

 

 

O: そんな中で、ベトナムでサスティナブルや、有機に関わる事を10年間されてきて、最近のご興味は、どのようなことを考えられてますか?  

 

 

M: すごく面白いのが、人って身近に感じると、それに対する問題意識が急に芽生えるんですね。何でこんなに、ベトナムでプラスチック問題が注目を浴びているかっていうと、ベトナムが世界4位のプラスチックの海洋投棄量になっちゃっているんですよね。すごく海が汚れていて、ブンタウとか行くと、水面にプラスチックとかが浮いちゃったりしていて。本当に身近に、プラスチック問題みたいなものがあると、やっぱり人は急に意識が向く。  

 

たとえば、ホーチミンの中心部のレストランを見ると、日本よりも全然プラスチックストローを使ってる割合が少ないし、今も、プラスチックストローを、アッパーなレストランで使ってる所があったら、何やってるの!みたいな意識になったりしているんで、そういうところがけっこう大きく違う。  

 

僕らが、一年前ぐらいにプラスチックをやめて、コンポスタブルなバッグに変えてから、半分くらいのアッパーなレストランは、コンポスタブルなバッグを使うのが当たり前になっているし、デリバリーの道具とかも、木のボックスとかを使うようになっているんで、目に見える化しているところに関しては、非常に問題意識が進んでいるっていうのは感じています。  

 

ただ、やっぱり、有機とか、オーガニックとか、無農薬に関しての問題意識は、一部アッパー層でめちゃくちゃあるんですけど、大衆でいくと、少ないかな?というとこはあります。たぶん、中国みたいに、ミルクの問題とか大きな社会問題があると、いきなり目が向くのかなっていう感じがしていますが、ベトナムでいうと、まだ、ニュースで人が死んだとかぐらいの問題がないので、まだそこまで、目が向けられてないのかなという気がします。

  

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バイオプラスチックから作られたバッグ

O: プラスチック問題は、ベトナム全体で考えられているところで、今回Pizza4P’sさんが10周年ということで、活動(https://www.letters-to-the-future.com)をされ始めたんですよね?  

 

 

M: そうですね。身近な問題を取り上げることで、人に、自分と重ねあう部分を持ってもらい、興味を引き出してもらうというのが、一つの目的です。 いまベトナムは、完全にロックダウンになってしまってですね(2021年5月31日現在)、レストランの営業も、停止しているんですね。なので、展示会も延期になってしまって、作品自体は出来上がっているのと、映像も全部撮れたので、非常に良い作品はできています。  

 

さらに、10周年に向けて、レストランのサスティナビリティレポートというのを、作ったんですよ(PDFのリンク)。「2025年までにどうする」というコミットメントを、具体的なアクションとともに発表する予定でした。いま、世の中プラスチックどころじゃなくて、新型コロナの変異種ができちゃって、どうしようかという状況になっちゃってですね…。

 

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Pizza 4P’sの10周年プロジェクト

O: 先程も坂本さんと、日本でのコロナ禍の話をしていました。

  坂本さんいかがですか?  

 

 

K: 自粛期間で、時間が今までよりは作れる分、いろんなことを僕も考えて、こうやって、「あしたの畑」の動きを話したりとか、別の水産物のサスティナブルな話とか、京都の放棄竹林を、人が集まれる場所に作り替えられないかな?という話をしたりしています。 自分で一番気づけたことは、このコロナ禍になったおかげで、店を必死で走らす、どうやって流行らすかということを、立ち止まらざるを得なくなったり、サスティナブルなことを、丁寧に自分できちんと進める方向で、自分のマインドが切り替えられたことは、すごく大きな変化かなって自分自身は思っています。やっぱり、従業員も多いんで、どこか言い訳を持ちながらやってた部分が、言い訳なしで、そういうことも考えられるんで、そういう意味では良かったかな?とプラスで捉えています。  

 

益子さんが言っていた、「人って、身近なことだと自分たちのことと思って、真剣に考えだす」っていうのは、僕もずっと最近それを思っています。 水産資源。魚が日本の近郊の海から、どんどん減っているとかの話でも、やっぱり一般家庭には、そういう話はまったく届いてないし、スーパーに行けば、何かしらの魚がある時点で、そういう身に迫っている危機感って、誰も持たなくって。同じく料理人たちでも、ある程度価格帯の高いところで、コネクション持っている人たちは、それなりにお金さえ払えば、困ることがない、ちゃんと仕入れられるっていう状況があるので、やっぱり、自分たちの身に近いこととして考えてないんですよね、どうしても。  

それをどうやったらいいのかっていうと、無理して大きい組織を作る必要もないと思うんで、かなり身近な人間たちの間で、常にその話をする機会をまず持つこと。それぞれが、自分の店に戻ったときに、自分のスタッフに話す、家族に話すっていうことが、広がっていく、日頃の会話の一つに、たまに上がるぐらいの取り組み方っていうのが、一番響くのかなって思っています。  

 

そうすると、それぞれの環境において、取り組むべきことが見えてくると思うので、急に国を動かして、漁業制限してしまうと、魚を捕れなくなる人たちが苦しむだけで、継続性のない取り組みのような気がします。そうじゃなくて、一匹の魚を、ちゃんときれいに食べようよっていうところが、本当は、一番大事やったりするのかな?とか、高い魚を、一食のうちに、3つも4つも食べないでいいんじゃない?っていうような、人間が行なう、食生活の仕方に対しての気の持ち方の変化とかっていうのが、もしかしたら、一番の抜本的改革になるんじゃないのかなっていうのが、最近僕の中で思っているところがあります。  

 

ベトナムで、益子さんがいろんな環境を変えて、この10年やってこられた中で、同じような取り組みに賛同してくれるレストランって増えてきましたか?プラスチックの話は、先ほどありましたけど、食に対しての取り組みというか、芯がちゃんとあって、有機とかそういうことを、農業などの一次産業から考えつつ、レストラン経営をしている会社って他にもあるんですか? 

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間人港

M: やっぱり少ないっていうか、ほぼ無いですね、まだ。 結局、経済がまだまだイケイケなんで、何を食するかっていうと、肉にいったりとか、しかも、ビーフにいったりとかするんで。それって、やっぱり、反対の方向性なんじゃないかなっていうことを感じます。ただ、それとともに面白いのが、ヨーロッパの人たちが割と住んでいて、一部で、日本よりも早い人たちがいるんですよね。それこそ、ビーガンがいたりとか、サスティナブルなことを考えるから、カーボンニュートラルという観点で、牛は極力食べないとか、いきなりガラッと変わる可能性はあるんですけど、全体的には、まだまだかな?という感じはしますね。  

 

 

S: そうなんですよね。利益率が高かったりってなったときに、やっぱり、人って、わざわざそんな面倒な、農薬を使わず化学肥料も使わなかったら、収量も減って虫にやられる可能性もあることをするよりも、これを使っておけば、ある程度の生産が安定して、利益につながるっていう一次産業と、それを使うことで経済が成り立つレストランというので、どうしてもそっちが優先になってしまう。いま日本は逆に、いろんなものが飽和していて、それだけを追いかけてても、ものも追いつかないと気付き出している人たちが、増えてきた。まあ、アメリカからだいぶ遅れてますけど、ビーガンっていうことの意味が、分かり出してきたっていうのもあると思うし、食べ方って、すごい大事じゃないかなと思います。  

 

たまたま、子供が家でゴジラの映画を観ていて、その中で、「人間が地球にとって細菌だ」っていう話がちょっと流れていて、こんなメッセージ性のある話やったんや、確かになあって急に思って。今、COVIDが、僕たちにとって悪さしてるって言ってるけど、人間って、地球にとって、増えれば増えるほど、悪さしかしていない状況で、そこを、ハァーって思うことがあって。そういうのって、僕が突然話し出して、思想家になりよったの?って思われちゃったら、あんまり伝わらないですけど、でも、人間がこうやって増えて、地球で生活していこうと思ったら、いろんなものを人間たちで分けて食べて、水を分けてってやる以外、生活していく術って、たぶん無くなっていくと思うんですよね、結局。そういう思いを、どうやってみんなに広げていくかっていう、そういうことができたらいいな、どうしたらいいんだろうって、今ずっと時間があるから、余計にモヤモヤと、そういうことは頭の中で回ってます。  M: そういうのって、何か情報発信みたいなのされてるんですか?  

 

 

S: 今こうやって、それぞれの人達と話をすることで、学んで、何も今、発信ができてる状態ではないです。まだ、きちんと発信できる状況じゃないのに、中途半端に発信させたらダメだなと思ってるので、偏った情報とかだけでやっても、良くないと思うし、自分自身の発信することが、広まりやすい周りの環境にある中で、偏ったその発信によって、苦しむ人を生むようなことがあってもいけないなと思っています。海のものが少ないから、取らない方がいいよなってことは、簡単には発信できないなとも思っていて、大々的な発信はしてないですけど、どういうふうに進めたらいいのかなぁということを、日々思っています。  

 

 

M: 物事は、本当に必ず両面があるので、そこを偏って発信するのは確かに危険だし、僕ら割と今、ベトナムでは、情報を発信できるようなポジションに幸いいるんで、そこはすごく気をつけていて、必ずオーガニックが良いとか、必ず無農薬が良いとかっていうことは、言わないようにはしています。無農薬とオーガニックの、もちろん、デメリットもあるわけだし、100億人食べさせようとしたら、必ず、効率的な農業の仕方も必要だし、ただ、問題点としては提起する。というスタンスをしようとしてるっていうのは、すごく大きいです。  

 

今、日本で、レジ袋貰わないっていう人が、すごく増えてるんですよね、既に行っている人が、80パーセント。ベトナムはゴミ分別もしてないので、そもそも、ゴミ分別してること自体すごいって思いますし、フードロスは、レストランサービス業的には、すごく大きなテーマですよね。何か、日本でやってる取り組みってありますか?  

 

S: 極々一部の話で言うと、何人かのシェフの人らは、コンポストできる機械を、店舗内に入れだしてる所もあります。フードロスの話で言うと、やっぱりレストラン、特に、名指しで言うとあれですけど、お寿司屋さんの魚の使い方っていうのは、やっぱりすごく影響が多いし、和食のカウンターに行ってる時に、やっぱり、端っこをピッてしたのが、ゴミ箱にいってる姿を、どうしても見てしまうので、美味しいなと思ってたのに、お造り切らはった後にそれを見てしまうと、やっぱり、僕の中では、捨てなくてもいいのにって思ってしまう、どうしてもね。  

 

逆に言うと、企業、例えば回転寿司の方が、もしかしたら、そういうロスに対しての取り組みをしてるかもしれないです。お金に換えた方がいいって絶対思ってるので、例えば、マグロの端でもネギトロにしてたりとか。  

 

あとはやっぱり、コンビニとかの、時間で廃棄していく物。僕たちが、生活の中で便利だからと思って、コンビニに行けば、常にご飯があるっていう状況を満たすために、コンビニはある程度防腐剤を使った物だけど置いといて、でも時間がきたら、もう全部廃棄していくっていう、その仕組みを変えない限りは、絶対ダメだと思っています。いつでも買えて、便利で物が口に運べるっていう状況が、当たり前になってしまったんで。それはでも、当たり前にするべきじゃなくて、自分達が、きちんとご飯を食べる時間っていうのを守れるようにすることで、改善できるフードロスだと思うんで、1番無駄なロスかなと、僕は思います。  

 

 

M: そうですね。僕ら、カンボジアに7月に、新しいお店がオープンする予定で、それは、完全にゼロウェイストっていうのをテーマにして、全ての物を、ゼロウェイストにしようってことを、コンセプトでやってるんですけど、フードロスは、やっぱり1番コストがかかるっていうのを含めて、難しいですよね。結局、それをどういうふうに処理するかっていうのが。 

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自社で出た廃棄物

S: 結局それって、お客さんに、そこも踏まえての料理の値段を出してもらえるっていう環境じゃないと、実はすごい難しいっていうことになってくるんで、今までのレストランの原価率何%っていうものが、変わっていかないとダメだろうなーって。原価率を、食材原価っていうのは、下げるべきではないかなと、でも、値段は一緒でいいと思う。その残りの、何%っていうのは、フードロスとかを減らすことに繋がる取り組みであるとか、もしくは、ほんとに丁寧な作り方をしている、一次産業の人達に対して、ちゃんとした単価で、物を買い取ってあげる仕組みのための原価設定、みたいな感じでやっていけるといいなと。  

 

結局、今の仕入高っていうのは、希少なウニを、みんなでお金出し合って争うから、昔やったら一箱2,000円だったのが、今はもう2万円ぐらいしてます、だから、客単価高いですよっていう。そういう値付けって、すごく意味がないなぁと思ってて。ないんだったら、やっぱりあんま使わない方が、数量回復するまでは控えた方がいいし、そうじゃなくって、4万円取るんであれば、単純に、高い食材を買って、使ってるんだけじゃなくて、自分達は、こんだけの取り組みにお金を使うから、でも納得して来てくれる人達っていう、そういう良い循環が作れないのかなぁっていうのは思っています。  

 

今うちでは、ちょっとずつ客単価、コース単価っていうのは上がってるんですけど、実は、使う食材に関して、このお値段にしては、キャビアやトリュフ使うなっていう考えは一切してなくて、働いてる人間の年齢が上がった分、当然、料理のクオリティも上がってるとか、そういう意味で、人に入る人件費を、そこで作るっていうのも一つだし、もちろん、ちゃんとした食材を、きちんとした価格で仕入れる分としての値段っていう意味で払ってるとか、そういう、じわじわと自分達がやってることの評価を、コースの価格として評価してもらっているって、今思いながらやってはいます。 

  

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cenciによる間人ハンバーガー

M: そこですよね。僕も、そこはすごく一番難しいところだなと思っていて、結局、受け手というか、消費者さんがどれだけ、それを意識できているか、前のめりになって払えるか、みたいなところが、テーマかなと思っています。僕らも、今やっている店が、1,200円単価とかの店なので、やっぱり来る理由が、バリューを感じるお客様がすごく大きい。坂本さんが仰ってるようなロジックで、値付けを決めるのが、理想だなと思います。僕らも、ほんと出来るだけいいものを使うようにしてきてるんで、特にシーズンものとかは、全部単価が上がってるんですけど、どこまでほんとに、皆さんついて来れるか。  

 

今、入るときは7,000人〜10,000人くらい、毎日、お客様が来てくださる中で、その人たちに対して、皆がやっぱりある程度納得しつつも、ちゃんと払ってもらえるか、みたいなところは、本当にチャレンジングであり、まあやり甲斐もあるっちゃ、やり甲斐もあるんですけど。  

 

 

S: 難しいところですよね。そういう意味では、僕は今、すごくやり甲斐を仕事に感じれています。仕事に誇りをもってて、そういうことに挑戦できるっていうのは、すごいあるんで、だからこそ、そこをちゃんと見せていかないとな、と思っています。  

 

M: どれだけ伝えられるかっていうのは重要ですよね、でも、一方的になってもいけないし。こっちが伝えたいと思っても、そんな情報求められてないから、みたいなところもあるんで、コミュニケーションの仕方はすごく重要だし、どうコミュニケーションしていくか、みたいなのは、僕らも会社としては、一番テーマですね、今。  S:そういうことに対して、 「もううるさいねん」って思われちゃったら駄目なんでね。まあでも、まだまだ、こういうのに対して強い思いを持ってる人たちっていうのが少ないのは、事実なんで。ただ、今回のAsia’s 50 Best Restaurantsで、生江さんの所(L'Effervescence)が、もっかいちゃんとグッて入ってきたりとか、villa aidaの小林さんとか、うちとかも、評価してもらえたりとかっていうのは、少しそういう、ラグジュアリー業界、評価サイトとかの何かが、変わりだしているのかな、っていうのはすごく思います。  

 

やっぱり、この数週間の間にも、ニューヨークのお店たちが、「基本は菜食主義のお店に変わります」みたいな発表したりっていうのがあるので、当然、そういうのが早いアメリカが発表したということは、日本にも、少しなりともそういう波は伝わってくるとは思います。日本だって今、情報がすごく早いんで、そういう意味では、持っていきようで、うまく行けるんじゃないのかな、って今、思ってはいるんです。当然、色んな考え方の人がいるんで、みんなが変わることは無いと思いますが、ただ、その比率を変えることくらいは出来るんじゃないかな、まずは。その延長に、何かが、もうちょっと明るい未来に、っていうふうに、今すごく思うんです。  

 

 

M: 今回Asia’s 50 Best RestaurantsのEssence of Asiaに選ばれた理由、その審査員の方たちとお話したんですけど、社会的企業の責任っていう所を評価したっていうのが、やっぱり一番大きいっていうのを話されていて、そこが評価されるっていうのは非常に嬉しいし、そういう世の中になっていくっていうのは、理想だなっていうのを感じました。  

 

 

徳田佳世(T): 杉本博司さんっていう、現代美術のアーティストがいらっしゃるんですけど、20年前に、神社を直島というところで、初めて杉本さんが、建築をアートとして取り掛かりました。それから、20年経って、7年かけて昨日(5月30日)、禅寺に、襖絵を納めるという会があったんですけど。なんか図らずも、神からの仏っていう、日本の歴史を辿るような、私自身も杉本さん自身も、そういう時間と空間を一緒にしたときに、毎日物を作る、アーティストで言うと、頭の中で思考して、それで実現までに7年かかったんですけど、その間に、決してぼーっとしていたわけではなく、長い時間をかけて、ある価値を生み出して、それが、人の心に届くものになると。  

 

それで、今の日本の問題って、京都は特に、例えば、450年前の桃山時代に、狩野永徳が描いたとか、長谷川等伯が描いたっていうものが、もうお寺には無く、国立博物館が収蔵されてて、何年かに1回、人が見れる。だから、本当はそれが祈りであったり、心を癒すはずのものだったものが、それは、美術館や博物館に行って見るもので、日常には、そういう美術作品は無く、レプリカにみんなお金を払って、拝観して、体験する。それに対して、疑問に思わない感覚っていう中で、さっきから仰っている、付加価値を含めたプライスの付け方っていうのが、私にとっては、似てるというか、「あしたの畑」って、そういう問題なんだと思って始めたところもあるんです。  

 

アートはアート、食は食、っていう問題じゃなくて、人の価値に対する感覚が、益子さんが最初に仰った、人間が、自然の森とか、海とか、そういうところから離れれば離れるほど、当たり前のことから遠ざかった感覚の中で生きていて。コンビニの話もさっき仰ってたけど、すぐに見える、すぐに買える、ファッションみたいなものが、だんだん価値を持ってきた。それって、すごく資本主義の最終の状況なんじゃないかなって、聞きながら思ってて、そうやって、お二人がずっとずっと、毎日、思考を続けられてるっていうのを、じゃあどうすればいいか?っていうことを、みんなは考えてないと思うんですよね、そういう状況なんで。  

 

だから、この活動が、さっき坂本さんも仰った、アメリカでは、もう次の一手っていうのを考えてる状況だから、私たちの次の一手、私にとっての、アートの次の一手は何かなっていうのが、一緒にこの次のステップでお話しできたらな、と思いましたが、何か、もうすでに益子さんの中に、これっていうアイデアがありそうな気もしながら…。  

 

 

M: いやいや。けど、今回10周年プロジェクトで、1000年後に向けて手紙を書いてもらって、世界中から、色んな人の手紙を集めたんですね。みんな共通してるのが、結局、思いやりのある世界だったりとか、人への思いやりだったりとか、自然への思いやりだったりとか、まあ、自然への思いやりは、結局、人への思いやりだったりもするんですけど、ほんと、そこに集約されるっていうのに尽きるかな、っていうふうにやっぱり思っていて。  

 

結局、今話してきた、環境配慮とかのこともそうですけど、極論、全部それって、思いやりに行き着くのかな、みたいなところがあってですね。でも、それを、僕たちが出来ることは何か?って言ったら、じゃあ、まず、目の前の人のことを考えたりとかっていうことを、目の前の人からやる事が、一番重要だよね、ってことで今、僕たち1,800人くらい従業員がいるんですけど、その1,800人が、みんなほんとに、マインドフルに、僕らコンパッションって呼んでるんですけど、人への思いやりだったりとか、コンパッションが持てるようになれば、来たお客さんは、それを感じるし、その家族に広げていける。  

 

やっぱり、僕らの中で立ち返るところは今もそこが一番じゃないかってことで、マインドフルプラクティスだったりとか、ちゃんと自分を見つめるとか、結局、そこは人へのコンパッションだったりとかっていうところを、今まさに、コロナ禍に入って、改めてやり直したところです。 

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坂本健さんからの1000年後への手紙 

T: 人と接する、物と接する、っていう時に、親切というか、優しい心で接することが出来る関係性って、続くような気がするんですよね。だから、この人は使えるとか、そういう感覚を如何に薄めていって、もう少し、コンパッションとか、カインドネスみたいな心が大切になってくる。でも、それも教育の一つなのかもしれないなって思うんですよね、子供に対して。それでも、やっぱり虐待終わってないとか、色んなアビューズがあったり、大量殺戮もまだあったりする、信じられない世の中が、まだいっぱいあって。イスラエルだって、あんなに先にワクチン打って、戦争してんだから、意味があるのかないのか。

私は、それを止める力が無いから、やっぱり、日々仕事を通して、その信念を通して、どう平和だったり、幸せっていうことに、繋げていくことが出来るのかな、ということで。 また、引き続き! 

  

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Pizza 4P’sでのピザ作りワークショップ 

S: ベトナムに行ける機会がまず出来るのが、一番楽しみではあるけれども、もし、益子さんが今後、京都とかに来れる時が来たら、一緒に間人の土地に行って、見てもらって、感じることとか、そういうことが出来たらいいなと思います。 ほんとに、益子さんのベトナムで果敢にやられてることってのは、僕らにとっては、すごく勇気になるので、「よくやるよなぁ」って、すごい見てて思うんですよ、ほんとに。だから、環境は違えど、出来ることはあるんじゃないかなって思って、これからも、色々一緒に続けていけたらいいなと思います!  

 

 

M: ありがとうございます! 

 

  

​写真提供:Pizza 4P's