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「あしたの畑の仲間たち」

  縄屋(吉岡幸宣、吉岡恭子) 

 

事務局 (Q): 吉岡さんには、間人で活動を始めるにあたってまず初めにお声がけさせていただきました。あしたの畑では、子どもたちへの食育を中心とした集落づくりをしていきたいと考えています。毎年高校生に授業をなさっているとお聞きしています。授業の内容をお聞かせいただけますか?   

縄屋: 清新(せいしん)高校に家政科の専攻があって、昨年は飯尾醸造の飯尾さんと一緒に「自分の好きなものはどうして好きなのか、嫌いなものはどうして嫌いなのか」を深く考える授業をしました。学生たちと一緒に、好きなもののどういうところが好きで、何を美味しいと思うのかを深く考えて、じゃあ嫌いなものはどういう要素があるから嫌いなのか、食べたくなるようになるにはどうしたらいいのかを一緒に考えました。

食べることは毎日のことなので、そこが改善されていくと、食事をすることが楽しいことになって、日常の中に楽しいことがひとつ増える。1日3食だったら、1日に3回楽しいことが増えるのは素晴らしいと思っているので、日常の中でいいなって思うことが増えていくような考え方ができる授業を目指しています。

最初はお店の器や調理道具を高校に持っていって、お店でやっていることを再現して食べてもらったりしていたんですが、それだとこちらからの押しつけのようなものに感じました。

次の年からは、ある程度こちらで作って、あとはこどもたちも一緒に作りながら、最後はお弁当スタイルにして盛り付けてもらうことにして、高校生にやってもらう仕組みにしていく方が食を身近に感じてもらえる気がしました。ご飯の炊き方を授業して、ガスで炊いたご飯と、薪で炊いたご飯の食べ比べとかもしています。

そういうものを食べたり、経験することだけじゃなくて、普段自分が身近に食べているものがどういうものなのかを考えて欲しいと思っています。今日食べたものはこんな味で、こんな風に感じたっていうのを自分の中でなんとなくでもいいので捉えて欲しい。そうすると、辛いの中にもいろんな要素があることに気付いたりして、こういう物もあるんだっていう選択肢が増えていきます。

考えることができるようになると、食だけではなくて、普段の学校生活にも通ずると思っています。自分を知ることでそういうことができてくると、いろんなことが楽しくなるし、生活が豊かになっていくんじゃないかなと。

Q: 食べ物も美味しくないと言ったらファイナルアンサー、美術もわからないと言われたらそこでおしまい。そこで、何が美味しくないの?とか何が美しくないの?と対話をすれば1歩近付いて、子どもたちもわかるようになると、違うからわからないと言わないようになる。

そのきっかけづくりを、幼少期の頃にいかに楽しい思い出として提供できるかが大事だと思っています。大人になってしまうとわからないことを遠ざけてしまうので、子供の頃から、美味しい、嬉しい、楽しいというポジティブな思い出になるような機会があるといいなと思っています。

 

2050年には水が枯渇するという話もありますが、20年後、30年後の食環境がどのように変わっていくと考えられていますか? 

 

 

縄屋: 自分の場合は、いま目の前にある食材、採れる食材を考えています。それらが変わっていくのであれば、自分がその変化に適応していきます。人類はコロナで大変だけれど、自然は毎年粛々と繰り返していっています。

 

特に山で山菜を取っていると、鳥の鳴き声とか自然の変化に敏感になります。今年は雪が降っているので、枯れ草が雪で押しつぶされて平野になるので山菜採りがとてもやりやすいですが、昨年、一昨年は雪があまり降らなかったので、枯れ枝の中をかき分けて山菜を取っていたので大変でした。雪が降らなければ、虫がすごく多くなります。地球温暖化でとにかく虫が増えている印象です。

日本の食ってなんでも取り入れるので、何食かわからないのが日本食だと思っていて、カレーだってラーメンだって、チャーハンも日本食になっていて、どんな食も自在に操るのが日本人で、家庭でこれだけ色々な国の食文化を知ることができる国は日本以外で見たことがないです。多くの情報を取り入れることができて、生活の中に落とし込むことができているんだと思っています。

スペインに住んでいる友人と、日本の家庭料理とか地方の郷土料理ってなんだろうって話をしたことがあります。最近は情報が広まって、全国の郷土料理が知られるようになったんですけど、本来とは違う、名前だけが残っている郷土料理もあって、それはインフラなどが整備され過ぎて、情報が多くなりすぎてしまった故の弊害なのかなと。

京丹後でもずっと昔から「へしこ」と呼ばれる発酵食・保存食が作られてきたんですけど、元々は、波が荒れて漁に出られない冬をなんとか生き延びるために、鯖が沢山獲れる春から初夏の産卵期のものを塩漬けにし、塩漬けにした鯖を更にぬか漬けにして作っていました。昔の人たちが生活の知恵から考え出して生まれたものなのに、今では「へしこ」という名前だけが継承されていって、ノルウェーからわざわざ鯖を輸入して、それを保存食として調理しているんです。それはおかしいなと思っていて、生きるための知恵から生まれてきたからこそ、現代まで残り続ける力強さがあって、「文化」として生き残り伝えられてきたわけで、そこの意味を認識し損ねると今後続いていかないと思っています。

そういったことを正しく美味しく子どもたちに伝えて、どうやって楽しいと思ってもらって継承してもらえるか、あしたの畑ではそういうことも考えていきたいと思っています。

 

縄屋(吉岡幸宣、吉岡恭子)

 

京都府京丹後市生まれ。 小さな頃から味わっていた自然の滋味溢れた美味しさを求め、地元に戻り、【魚菜料理 縄屋】を2006年にオープン。 

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